自分のお葬式にさまざま希望を持っている方は少なくありません。「どのような規模で」「誰を呼ぶのか」「どれくらいの費用で準備するのか」など、こだわりたい部分がひとつはあるのではないでしょうか。
人によってさまざまなこだわりがありますが、この記事でご紹介するのは低予算で葬儀の準備をする方法です。
葬儀費用の基礎知識と、低予算で葬儀を行う具体的な方法を解説します。
終活するなら知っておきたい!葬儀は何にいくらかかる?
葬儀を行うにあたり、まず知っておきたいのは、葬儀全体にかかる費用の概算と、それぞれの項目にどの程度の費用が必要かということです。
鎌倉新書が2022年に行った「第5回お葬式に関する全国調査」によると、葬儀にかかった費用の合計平均は110.7万円でした。
葬儀にかかった費用は、次のグラフのように減少傾向にあります。
第5回お葬式に関する全国調査(2022年)より作成
平均相場は地域や葬儀社によって大きく異なりますが、葬儀の準備をする段階で知っておけば、予算を立てやすいのではないでしょうか。
葬儀費用は大きく分けると次のようになります。
- お葬式にかかる費用
- 葬儀の飲食にかかる費用
- 葬儀の返礼品にかかる費用
- 僧侶へのお布施などにかかる費用
上記の内容を、詳しく見ていきましょう。
お葬式にかかった費用
上記調査では、お葬式にかかった費用は67.8万円でした。
ここに含まれるのは、火葬場使用料、式場使用料などです。葬儀のグレードや葬儀の形式によって金額は大きく変動します。
葬儀の飲食にかかった費用
葬儀の飲食にかかった費用は、20.1万円でした。
「通夜振る舞い」や「精進落とし」、「飲み物代」などにかかった費用です。会葬者が多くなれば飲食代も多くなりますが、都心部を中心に通夜振る舞いを行わないケースも増えており、費用に大きな差が開く部分です。
葬儀の返礼品にかかった費用
会葬者への返礼品や香典返しにかかった費用は、22.8万円でした。
会葬者への返礼品とは、通夜や葬儀に参列した方にお渡しする返礼品のことです。香典を包んでくれた方に四十九日以降にお渡しする香典返しとは別です。
会葬者の数や、香典を受け取るかどうかによって費用に大きな差が開きます。
僧侶へのお布施などにかかる費用
読経料や戒名料、心づけなどで、お寺や教会、神社などへ納める費用は22.4万円でした。
地域や宗派によって相場は異なります。
低予算で葬儀を行うための具体的な方法
経済的な負担を抑えつつ、心に残る葬儀を実現するためには、いくつかの具体的な方法を知っておくことが重要です。
ここでは、低予算で行える葬儀の種類と葬儀社の選び方をご紹介します。
葬儀の種類
低予算で行える葬儀の種類では、家族葬と直葬が候補となります。
ふたつの方法の特徴を見ていきましょう。
家族葬
家族葬は、限られた親族のみで行う葬儀です。外部からの視線を気にすることなく、故人との最後の時間を大切に過ごせます。
参列者が少ないため、会場費用や飲食費用、お返しの品などの費用を抑えられるなど、経済的な負担を軽減できます。
直葬
直葬は、故人が亡くなった後、葬儀を行わずに直接火葬を行う方法です。シンプルなお別れを望む方から選ばれる方法で、経済的な負担を軽減することができます。
一般的に、故人を病院や自宅から火葬場へ搬送する際には、葬儀社に搬送を依頼します。そのため、火葬費用や搬送費用、必要に応じて法要の費用は発生します。
葬儀社の選び方
葬儀社によってサービス内容と価格は大きく異なります。複数の葬儀社から見積もりを取り、比較検討することが大切です。また、地域の公営斎場を利用することも、費用を抑えるひとつの方法です。
低予算で葬儀を準備するための補助金・支援制度
葬儀を低予算で行いたい場合、公的な支援制度を利用する方法もあります。
制度を利用することで、経済的な負担を減らしながら、故人を尊重した葬儀を行うことができます。
低予算で葬儀を行うための公的支援制度について
国民健康保険や健康保険に加入していた場合、葬儀費用の一部を給付されます。
給付金には、国民健康保険加入者に対して支払われる「葬祭費」と、健康保険加入者に対して支払われる「埋葬料」または「埋葬費」という種類があります。
これらの給付金は、支給される対象となる費用の範囲が保険によって違います。ここでは、それぞれの給付金に関して解説していきます。
国民健康保険加入者に支払われる「葬祭費」
故人が国民健康保険の加入者であった場合、葬儀後に地方自治体(市役所や町村役場等)へ申請を行うことで給付金を受け取ることができます。
この給付金の額は自治体ごとに異なり、一般的には約1万円~7万円の範囲で支給されています。
例えば藤枝市では5万円が支給され、広島市では3万円が支給されます。
参照:藤枝市「葬祭費」
参照:広島市「葬祭費」
申請には死亡された人の保険証や死体(埋)火葬許可証、葬祭執行者の預金口座の分かるものが必要となり、申請書への記入が必要です。
葬祭費の支給申請は2年を過ぎると時効になり申請できなくなるため、注意が必要です。
健康保険加入者に支払われる「埋葬料」
故人が健康保険の加入者であった場合は、「埋葬料」または「埋葬費」として給付金が支給されます。
この給付金は、葬儀全般の費用ではなく、埋葬に関連する費用を支援するものです。
たとえば霊柩車の使用料、火葬費用、僧侶に支払うお礼などの費用が対象となります。
申請手続きは加入している健康保険組合や、全国健康保険協会などの保険提供者に対して行う必要があります。健康保険から受け取れる給付金の上限額は5万円であることが一般的です。
民間の支援や補助金
民間企業や非営利団体による葬儀費用の支援もあります。
例えば、特定の保険商品に加入している場合、葬儀費用の一部が補償されることがあります。また、地域に根差した非営利団体では、低所得者向けの葬儀サポートプログラムを運営している場合があります。
終活内容のひとつ、事前準備としての生前契約
葬儀の「生前契約」が近年注目されています。生前契約とは、自身の葬儀に関する内容や費用を生前に決めておくことで、遺族の負担を軽減し、自分の意志に沿った葬儀を実現する方法です。
ここでは、生前契約をすることのメリットとデメリット、信頼できる葬儀社の選び方、契約時の注意点について解説します。
生前契約のメリットとデメリット
生前契約のメリットは3つあります。
- 遺族の精神的・経済的負担の軽減
葬儀の計画を事前に完了しておくことで、遺族は葬儀の手配に追われることなく、故人との最後の時間を大切に過ごすことができます。
- 自身の意向に沿った葬儀が可能
自分自身で葬儀の形式や内容を決めることができるため、生前の意志を反映した葬儀を実現できます。
- 葬儀費用の事前確定
葬儀費用を事前に決めておくことで、不意の出費を避け、経済的な安心感を得られます。
生前契約のデメリットは、主に2つが考えられます。
- 契約内容の変更が難しい
一度契約を結んでしまうと、変更やキャンセルが難しい場合があります。そのため、契約内容を慎重に検討する必要があります。
- 葬儀社の選択を誤るリスク
信頼できる葬儀社を選ばなければ、納得のいくサービスが受けられない可能性があります。
信頼できる葬儀社の選び方
信頼できる葬儀社を選ぶ際に気をつけたいポイントを3つご紹介します。
実績と評判の確認
長年の実績があり、地域社会からの評判が良い葬儀社を選びましょう。
インターネット上で葬儀社の名前を検索し、その葬儀社に関するレビューや評価を読むことができます。地域のコミュニティや知人からの口コミも貴重な情報源です。
また、葬儀業界には、品質や倫理基準を満たしていることを示す認証や資格が存在します。葬儀社が業界団体に加盟しているか、または特定の認証を受けているかを確認することで、その葬儀社のプロフェッショナリズムと信頼性の一端を見ることができます。
透明性のある費用説明
葬儀の基本費用、棺の費用、運搬費、式場の使用料、飲食費、僧侶へのお布施など、具体的なサービスごとにかかる費用が分かるようになっているかを確認しましょう。
追加で発生する可能性のある費用についても、事前に説明を受けることが重要です。たとえば、追加の飲食や花輪、特定の儀式に関連する追加料金がある場合、その詳細と費用を明確にしておく必要があります。
「その他の費用」として漠然とした項目が見積もりに含まれていないか、または説明されていない費用がないかも確認しましょう。
支払いのタイミングや方法(分割払いが可能かどうか、前払いが必要かなど)についても、事前に明確な説明を受けておくことが重要です。また、キャンセルや変更が生じた場合の条件や、それに伴う費用の扱いについても確認しておきましょう。
アフターサポートの有無
葬儀後のサポート体制が整っているかも、葬儀社選びの重要なポイントです。
葬儀後のアフターサポートとは、葬儀を終えた後に葬儀社が提供する様々なフォローアップサービスのことを指します。遺族の精神的な負担を軽減し、葬儀後の手続きや生活への移行をスムーズにサポートすることを目的としています。
たとえば、四十九日法要や一周忌などの法事の手配のサポートや、遺品整理や遺品供養のサポート、相続手続きに関する基本的なアドバイスや専門家(弁護士や税理士)を紹介するサービス、などがあります。
終活:低予算でも心温まる葬儀の準備を
葬儀の準備をする際には、多くの人が自分や家族にとって最適な方法を模索します。特に費用面では、無理なく準備を進めたいという願いが強く、低予算での葬儀準備が求められることがあります。
低予算でも心温まる、意味のある葬儀を実現するために、この記事で紹介したポイントを参考にしてください。